〜(2)〜

それから何日もの間、レゴラスは旅の仲間の他のメンバー達との交流を深めることに 努めた。
ホビット達が、実はとても可愛らしい存在であることを知るにつれ、彼は大いなる 愛情を寄せるようになった。
そして、元々良く知る間柄で深く尊敬もしているガンダルフとももちろんよく話し た。
ギムリとの相互関係は思ったほどの効果が上がらなかったが、まあそれもこれから に期待、といったところだ。
仲間のうちの人間達との乱れ縺れ合った関係については−−それこそ、レゴラスも なんとかその関係を修復しようとはしていた。

ボロミアはエルフに腹を殴られたことなどもうとうに許していた。もしくは、そのよ うに振舞っていた。しかしながら、レゴラスはまだ彼を完全には信用できないで いた。
あの人の子は明らかにわたしに対してのぼせ上がっている。
レゴラスは、人間の移ろい易い執着心なぞに全く興味はなかった。

アラゴルンに関しては・・・レゴラスは、野伏についてはこれっぽちも考えたくもな かった。
実際できる限り、エルフは暗く、無口な人の子に近づかないようにしていた。
一度、矢羽の手入れをしている最中に、視線を上げた彼は自分を眺めているアラゴ ルンに気付いたことがあった。その蒼い双眸に浮かんでいた憧憬の色が、すぐに怒り に取って代わる。レゴラスはすぐに頭を下げ、今見たものを無視しようとした。
しかし、忘れるなんてできっこない。
それに、彼をより悩ませているのは一体どっちなのか−−アラゴルンが彼を欲して いるという事実なのか、それともこの人の子の忍耐力が徐々に擦り減っていると感じ ていることなのか。彼にはわからなかった。

だから、夜営のための薪を集める役を引き受けたことはレゴラスにとってある意味 ほっとすることだった。爽やかな木の香りとみずみずしい大地は、ここ何日かの間に 溜まっていた緊張感を洗い流す手助けをしてくれる。
しかしながら、背後から聞こえた足音に、彼は新たな緊張に肩を鷲掴みにされた。

「やっと、あんたと一時なりと静かな時間が持てる機会がきたな」

ボロミアが木に凭れかかるのを見ながら、レゴラスは無言のままでいた。人の子 の物憂げな眼差しが彼を惚れ惚れと眺めている。
「私がキスしたやり方にまだ腹を立てているのか」 人の子が思い切った様子で云った。

レゴラスはもう一本枝を拾って腕の中の束に加えた。
「そんなことは考えてません」平たい調子で答える。
「あの馬鹿げたひとときはわたしにとって何の意味も無いこと。あなたも、忘れ たほうが賢明でしょう」

「あんたのようにエルフの平静さを持ち合わせていればそれもできようが」
人の子は芝居がかった風に溜息をついた。
「しかし、私は人の子にすぎん。弱さを持った人の子にな」

レゴラスは男の冗談に乗る気はなかった。ボロミアを無視して、また小枝や木切れ を集め始める。人の子が痺れを切らし、身を起こすのを、彼は見た、というよりは 聞いた。
「レゴラス−−」

「夜営地にお戻りなさい、ボロミア」
彼は静かに遮った。
「無駄に言葉を費やすものではないでしょう。まあどうでもいいですけど」

「しかし、できんのだ。あの時の記憶が、眠っていてさえ私に付き纏うのだぞ!」
にじり寄る人の子の足元で落ち葉が四散した。力強い手がエルフの腕を掴む。
「レゴラス−−」

持っていた木切れが地面に落ちるよりも先に、エルフの手には短剣が閃いていた。
エルフの刃がぴたっと喉元に当てられ、ボロミアが凍りつく。
「あなたは我を失っているようだ」
やんわりと致死的な響きを含んだレゴラスの呟く声に、人の子の眼が見開かれる。
「あなたが何を云おうとわたしには興味ありません、ゴンドールの息子よ。もう二度 とわたしの邪魔をしないで。さもないと仲間から最初の脱落者が出ることになりま すよ。いいですね?」

ボロミアが、押し付けられた短剣に対して可能な限りに頷く。
罵りの言葉を呟きながら、レゴラスは刃を離して、人の子がよろめくように木々の 間に消えていくのを諦観の表情で見送った。
身も心も疲れ果て、エルフは落ちた薪木を拾おうと屈み込んだ。
もうずっと、頻繁に、彼は尾けられていた。だけど今は戯れ事をしている場合じゃ ない、と彼は自分自身に言い聞かせる。精神的な、そして肉体的な色事は不必要な 混乱を招くだけだ。
決してボロミアと敵対したかった訳ではなかったが、そうなってしまったであろうこ とを彼は恐れた。

他の者達と顔をあわせるのが億劫で、彼は必要以上に長い間森の中をうろうろ していた。しかし当然、義務として足を夜営地に向けざるを得なかった。
薪木の束を下ろしながら、ボロミアの姿がどこにも見えないことに気付く。
アラゴルンは倒木の上に一人で腰掛けてぼんやりと木片を削っていた。ふと野伏は 顔をあげ、読み難い表情で彼を眺めると、また木彫りに意識を戻した。
レゴラスは溜息をついた。
さっきあんなことがあったせいで、身体が汚れているような気がする。もしここを 抜け出して水浴びに行ったとしても、誰も彼がいないことに気付くまい。そう決心し た。

水袋が一杯に満たされていて誰も川に行く必要がない、ということを確認した後、 レゴラスは少し浮上した心持でゆったりとした水流の方へと走っていった。
素早く服を脱ぎ、その冷たい流れの中に入っていくと、月明かりが銀色の細流と なって川に縞模様を作る。彼にとっては少し水は冷たかったが、あえてその心を 浄化されるような感覚を受け入れた。頭を水に潜らせて、濡れた髪の束が痛い くらいに肩甲骨にぴしゃっと張り付くのに喘ぎを上げる。

彼はしばらくの間泳ぎ、神経を宥めてくれるようなさざなみが肌の上を通り過ぎて ゆく感覚を楽しんだ。
川岸に近づいて丸く磨かれた小石を踏みしめ、腿の辺りで水音を立てる川面が きらきら輝く様子を惚れ惚れと眺める。

その彼の感じていた静けさは、背後から誰かが水の中に押し入ってきた気配でたち まちのうちに消え失せた。苛立ちが彼の中で湧き上がった。
振り返り、ボロミアを殴るなり押し退けるなりしようとした手はしかし、巧みに手首 を捉えられ、捻り上げられて後ろにぐいと引かれた。警戒して上がりそうになる 悲鳴をどうにか抑える間に、レゴラスは後ろにある熱い、体毛に覆われた胸に 引き寄せられていた。

「お前が荒っぽい遊びが好きだとは知らなかったぞ、小さきエルフよ」

アラゴルンだった。
彼が素っ裸だということに鋭く気付き、レゴラスはもがくのをやめた。尻の辺りに 何か熱く、硬いものが軽く触れる。
彼は猛烈に顔を赤くしながら前方に身体を逃がした。人の子が笑う。

「放して」
レゴラスは歯をきしらせて云った。そうしてこっそりと、この大きな人の子を投げ 飛ばすための支えにしようと両脚を少しずつ開いていく。

と、その両脚が蹴り払われてバランスを失う。
「そんなこと、しようとも思わぬことだな」
アラゴルンが耳元で警告した。
エルフを押し広げている脚が持ち上がり、人の子の脛の辺りが双球の下を 軽く擦った。レゴラスは身体を捻って逃れようとしたが、両足が大きく開かれて いるせいで不安定な川底にうまく立つことができない。脚の間にある脛にゆっく りと前後に擦られ、思わず小刻みに身体が震えて彼は舌を噛み締めた。

アラゴルンの舌がエルフの滑らかな顎のラインをなぞる。
「こんなところで何をしていた、レゴラス?うん?誰かを待っていたのか?」
そう云って、歯が刺さるほどに鋭く噛み付く。
「ボロミアを、かな?」

「こんな戯れ事には付き合っていられません」
レゴラスが歯の間から搾り出すように云った。

「戯れ事なぞではない」
野伏が確固とした口調で云う。「俺にとっても、奴にとってもな」
人の子の空いたほうの手がエルフの胸の辺りに伸びて来て、胸郭の筋肉を包 み込んだ。
「ボロミアが欲しいか?」

指で立ち上がった乳首をなぞられ、レゴラスの息が止まる。
「いいえ、まさか」

そして抓まれて、細い悲鳴があがった。
「奴はお前を欲しがってる」

アラゴルンがもう一方の乳首に手を移してそこを抓り上げるのに反応して、レゴ ラスは己の中心がさらに硬く立ち上がるのを感じた。激しく首を振る。
「彼が何を思うかなんて、私にどうしようもないでしょう」

「本当に?」アラゴルンの声音は凶暴で掠れていた。
「お前の全てが俺達人間を屈辱的な気持ちにさせる、ということに自覚はない のか?」
彼はエルフの手首を掴む力をますます強め、細い身体をぐいと引っ張るともう 一方の手で胸から鳩尾の滑らかな肌をまさぐった。
「この美しさは人間の心ををうずかせる。お前も分かっているはずだ」

愛撫の指がだんだん下の方に降りてきて、エルフの喉からどうしようもないうめき が迸り出た。昂ぶりの根元で苦痛を増す部分に指を廻され、これまで感じたこと のないほど己の弱さを痛感する。自制心が弾け飛び、もっと直接的な刺激が欲し くて腰を自ら動かす。
しかしアラゴルンはそう簡単に扱いてはくれなかった。彼はレゴラスの腿に手を 置いて、脈動する中心の側面に沿って親指でやんわりとなぞり始めた。

「何が欲しいか云ってみろ、レゴラス」

エルフが挫折感に塗れた鼻声を漏らす。
「お願い−−」

「何が欲しいか云わないと、得ることはできんぞ」

それは、抱くには耐えがたいほどの痛みを伴った想い。
「あなたが欲しい!」
とうとう、レゴラスは吐き出すように云った。
「アラゴルン、あなたが欲しい・・・」

野伏が息をついて、露わになったエルフの喉にキスを降らせた。
「そうだ、俺のエルフよ。それこそが、俺の聞きたかった言葉だ」
彼はレゴラスの頤を掬い上げると口付けを受け入れさせた。
エルフがアラゴルンの舌の侵入を許す。濡れた熱が彼を満たし、彼を熱くする。
アラゴルンの貪るようなキスはあたかも苦難の果てに与えられたご褒美のようで もあり。野伏の舌はそのまま優しく頬から頤に移動した。
喉に沿ってその湿りが移動するに従って、レゴラスの瞳が焦点を失い始める。
渦巻く情熱に朦朧としながら、エルフはふと川の向こう岸で小さく動く何かを捕らえ た。

彼は思わず目を見開いた。ボロミアだ。
鬱蒼とした木々の間からでも、その自称アラゴルンの競争相手の食い入るような 表情は月明かりにはっきりと照らされて見てとれた。レゴラスは手首をもぎ放そう ともがいた。

「お前も、奴が見えたか?」アラゴルンが、楽しそうに云った。

「ずっと気付いていたのですか?」レゴラスは混乱してまくし立てた。

肩に押し付けられた唇が笑いに歪む。
「俺は単に、奴がこないだ俺にくれたご好意をそのまま返しただけだ」
人の子の手が引き締まった尻を撫でさすった。
「せいぜい奴を楽しませてやろう」

レゴラスは抗った。
「嫌だ!私は人の子の娯楽の道具などでは−−ああっ!」
アラゴルンの指が彼の中に滑り込んできて、抗議のうめきが突然歓喜の喘ぎ に変わる。
「力を抜け」
アラゴルンが優しく宥めた。無遠慮な指先でレゴラスの内側を抜き差しし、エルフ の欲情を煽る一点でやんわりと円を描く。レゴラスの頭が後ろに傾いで人の子の 肩に支えられ、もう一本の指が滑り込んでくると短く鋭い喘ぎがあがる。
アラゴルンの舌が開いた口に差し込まれる。レゴラスはそれに貪欲にしゃぶり ついた。

と、指がすっと抜け出た。その喪失感は長くは続かず、すぐにアラゴルンの濡れた 男根が当然のように内部に押し入ってきた。
野伏は熱い鋼のようで、またベルベットのようでもあった。レゴラスを一杯に満た し、エルフはもうそれしか感じることができなくなる。
アラゴルンが後ろに引き抜き、それから低くうめきながら前に押し出す。
そしてもう一度。

手を廻したアラゴルンに揺れる中心を掴まれ、レゴラスは声を上げた。
人の子が自分の抽挿にあわせて手を動かすので、彼の腰が動くたびにエルフの 口から切迫した悲鳴があがる。

「奴を見ろ」
アラゴルンが野太い声で囁く。眩暈がしながらも、レゴラスは眼を開いた。
「奴を見るんだ」
人の子が繰り返した。見たくはなかったが、エルフは木々の間にいるボロミアを 探した。
いた。ゴンドールの戦士は根が生えたようにそこに立ち尽くし、その顔に張り詰 めた欲望を漲らせているのが遠目にも明らかだった。

アラゴルンが抽挿の速度を緩め、男根をゆっくりと、物憂げにレゴラスに差し 入れた。
「奴が何を見ているか、想像してみろ」
野伏が耳元で囁く。
「お前という獲物を捕まえ、アソコで刺し貫いている俺だ。お前の愉悦の源を 掴んで、楽しみながら扱っている俺だ」
レゴラスの身体を震えが走りぬけ、うめきが漏れ出た。
「奴はお前がいかに弱いかを見ているぞ。貫かれるたびにお前の身体が持ち 上がるのを、俺が奪うたびにお前の顔が欲情に歪むのを見ているのだ。 奴はお前を欲しがっている」
そしてアラゴルンは囁いた。
「だが、お前を決して手に入れられないことを奴は知っている。お前が俺のもの である限りは。俺がお前にこうしているうちはな」

アラゴルンが抽挿を深め、あまりにも激しく打ち付けるので、エルフは自分達が ひとつになったような錯覚に陥る。
溢れ出る快感を押さえ込み、レゴラスはなんとか抜け出そうとした。しかしアラゴ ルンは二度と彼を逃がそうとはしなかった。
「抗うな」
人の子が苛立った調子で云う。エルフの中心に絡みついた手が激しくそこを 扱き、とうとうレゴラスは喉から悲鳴を絞りだした。
エルフは達し、白銀の迸りが孤を描くように飛び出した。

「畜生!」
アラゴルンが唸って、そして彼もまた自らの情熱に屈する。野伏は激しくレゴラス を掴むと喘ぐエルフの中に己を吐き出した。
彼はレゴラスの腕を解放し、後ろに倒れ込みながらエルフの細い身体を抱き 締めた。

「わたしはあなたの所有物じゃない」
ようやく呼吸を取り戻すと、レゴラスは喘ぎながらもどうにかそう云った。

身体に廻された逞しい腕に力がこもる。
「いいや、所有物だ、レゴラス」 アラゴルンは彼の肩に口付けた。
「お前は今、俺のものだ」

エルフは何も云わなかった。
木々の向こうに目をやると、そこには誰もいない。
そのことに自分が感じたのが失望であったことに、彼は驚いたのだった。


The End
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