| <お読みいただく前の注意書き> 翻訳する時、いつも登場人物の使う一人称や二人称をどうしようかというのが 大きな悩みなのですが、今回一番頭を悩ませたのがボロミア。 摂政の長男でお坊ちゃん育ちのようだから、一人称は乱暴な「俺」ではなく「私」 が妥当なのですが、エルフちゃんも同じ一人称だしなー、ということで区別する ためにエルフちゃんは「わたし」にしました。まあ、些細なこだわりです。 問題は、二人称。うちのエルフちゃんはいつも敬語を使うので(めちゃくちゃ 怒ってる時意外は、笑)ボロミアに向っては「あなた」。対して、ボロミアは レゴラ ス を何と呼ぶか? 「お前」というほど親しい関係ではないし(だって初対面だもん!)それじゃ アラゴ ルンと一緒になってしまうし。かといって「あなた」と呼んじゃうと 対等じゃなくな る 気がするし・・・。 距離感と対等感を出すために散々悩んだ結果は、本文でお確かめください。 もしイメージに合わない場合は自己脳内変換をよろしくお願いいたします。 つくづく、日本語って難しい。 A Question of Motive (真意の問いかけ) 〜(1)〜 裂け谷でエルロンドの会議が開かれた日はボロミアにとってほろ苦い感情を 残す一日となった。 この人の子がレゴラスに、闇の森のエルフの王子に、これまでの人生で最も 美しい存在に、初めて出遭った日であった。 エルフを見たとき、ボロミアの世界の何かが変化した。彼が真実と信じていた 全てのものの表面に小さなさざなみが立ったのだった。 そしてそれは、力の指輪が、全ての苦しみの源である指輪が、初めて彼を 呼んだ日でもあった。 ボロミアはこの会議に誇り高き人間の代表としてやって来た。その彼にとって、 その場にもう一人の人間が参加しているなど思いも寄らぬことだった。 ましてや、自らをストライダーと呼ぶ辺境の野伏ごときが。 一瞬躊躇いはしたものの、普段から状況にすぐ順応する性質の彼は軽い 会釈でもってもう一人の人間の同席を認めた。そうしてからボロミアが興味を 向けたのは、この会議に出席する他の顔ぶれだった。 それは全くもって、風変わりな顔ぶれだった。 ドワーフ達は頑丈で色黒く、ボロミアには彼らが石で出来た飾り台のように 思えて仕方なかった。この背の低い戦士達は半円に形作られた席の中で いらいらした様子を隠そうともせずに座っていた。この会議の目的が何にせよ、 ドワーフ達はさっさと片付けてしまいたい、といった様子である。 次に、ガンダルフとともにやって来たホビット。 ボロミアの見るところこの小さい人は明らかに衰弱していて、一体何のために ここにいるのか、彼には疑問だった。ホビットの村には、もっと溌剌とした者が 他にいたのではないか?この小さい人は病んでいるようにも、またともすると この上なく苦しみから解放されたようにも見える。彼は胸の辺りを大事そうに 手で掴んでいた。 そして、エルフ達。 ボロミアはこれまで、森から来たこの美しい種族にほとんど接触したことが なく、集団的に冷ややかで、遠い存在だと思っていた。 ほんの時折、エルフ達が彼の父を訪なうことがあったが、彼らが無言の 優越感を持ってボロミアをじろじろと検分する様は彼の心にわだかまりを 残していた。まるで彼が全ての弱さを持ち合わせた、取るに足りない 常命の子であるとでも云いたげなその態度。 美しくはあるが、氷のように冷たい心を持っているのではないか、と思えて 彼はほとんどエルフに対する興味を持たなかった。 しかし、今回は違った。いいや、”彼”は違った。 ボロミアの視線が、すぐにレゴラスを捕らえた。他の同胞と同じく光沢の ある灰色のマントと緑のズボン下を着て、淡い白金の髪を同じように 伸ばしていたけれども、レゴラスが石炭の中に埋もれた宝石のように輝く様は どうやっても隠しようが無かった。彼の美しさは賞賛されるべきものだ。 ボロミアはこれまで一度も、エルフの表面的な不可侵の美しさに惹かれた ことはなかった。しかし、自分の意思に反して、彼の視線は幾度となく レゴラスに注がれた。 まるで見足りなければ渇き死にでもするかのごとく、彼はそのエルフの 姿に酔っていたのだ。 エルロンドが話し始めた。 遠くミナス・ティリスからわざわざやって来て、それを聞かねばならぬという ことをボロミアは重々承知の上だった。しかし、それは困難なことだった。 宝石のごときレゴラスの姿が、己の視界の端で涙のように光るのだ。 と、エルフが向きを変える動きを感じ、彼は思い切って視線をやった。 レゴラスが真っ直ぐ彼のほうを見ていた。 その接触は、稲光のような衝撃だった。 身体の奥底で熱が燻る。信じられないことだが、身体の一部を硬くする 欲望が湧きあがるのを感じる。彼はぐいと視線を引き剥がした。 そんなことを考えてる時ではない。そんな場合ではない。自分を叱り付ける。 彼は努めて会議に意識を集中した。裂け谷の主が大いなる悪の脅威に ついて話しているところである。ボロミアは身を乗り出して聞いた。それは 彼に関係することだったから。故郷において、度重なる恐怖と苦痛とを 彼は思い知っていたのだ。 エルロンドが、フロドという名の例のホビットを呼んだ。 ホビットが立ち上がったとき、ボロミアはその小さい人がさっきから胸を 掴んでいたのではなく、実は上着に付いている小さなポケットを守って いたのだ、ということに気付いた。 そしてフロドがそこに手を入れ、指輪を取り出した。 単なる指輪ではない、とボロミアは目を見張る。 それはあの、ひとつの指輪だった。 驚愕の喘ぎが会議の場を包んだ。 ボロミアは我知らずレゴラスに目をやり、このエルフの反応を探る。 彼の美貌は厳しい表情をしていた。しかし−−そこには同時に、希望も 見てとれはしないだろうか? この指輪は世界を変える力と同時に、命を延ばす力ももっていたはず、と ボロミアは自身に語りかけた。もし、エルフでさえもがこれに期待を持つ ことができるのなら、きっと邪悪なもの以外の何かだってここから引き出す ことができはしまいか? エルロンドが再び、指輪の潜在的な害悪について話していた。そのような 不吉な予言はボロミアの忍耐力を試すことになった。 何という心の狭さ。このエルフの領主は間違っている・・・人の子は、それ 以上聞いていることができなくなり、立ち上がった。 「これは授かり物だ」 ボロミアは興奮気味に訴えた。この指輪を使うことの意義は計り知れない ほどにあるし、余りにもその存在は否定し難い。彼の民たちを救うことが できるかもしれない。戦いを終わらせ、平和を取り戻すことができるかも しれない。そして希望を与えることも、そう、エルフ達にだって−− そこで彼を鋭く遮ったのは、ストライダーと呼ばれる人間だった。 「その指輪を使いこなすことはできん。誰にもだ」 ボロミアは彼を振り返った。この馬鹿は、ここから一体どれだけのものを 得られるのか、分かっていないのか? 「野伏ごときに何がわかる」そう詰問する。 返答は予想外のものだった。そしてそれを発した者を認めたときの、 いや増す痛み。 立ち上がって野伏を庇ったのはレゴラス、ボロミアが見惚れていたその人 だった。エルフの茶色の双眸がボロミアの視線を鷲掴みにして離さない。 人の子の心臓が跳ねた。 「彼はアラソルンの子アラゴルン、ゴンドールの王位を継ぐ者だ」 そして付け加えられたエルフの声には、あからさまな批難の響きがあった。 「あなたが忠誠を誓うべき相手だ」 そのすべらかな声に吸い寄せられ、その視線に心の奥まで見透かされて ボロミアは言葉を無くし、途方にくれそうになった。 しかし、アラゴルンの出自を知ったことでボロミアは冷水を浴びせられたよう に我に返る。ショックを受けながらも、彼はかろうじて挑戦的な態度をとった。 「ゴンドールに王はいない」 そうつぶやき、全員に背を向けた。 「王などいらない」 そうして誰も見ずに席に帰る。重苦しい思いが彼に圧し掛かっていた。 アラゴルンは彼のことを、ひとつの指輪の力を使って征服し、支配しようと している愚か者だと決め付けているだろう。しかし、何かがボロミアの中で 僅かに変化していた。 この日を境に、彼は今まで以上のものを欲するようになった。自分の持つ べき力以上のものを。少なくとも、独力では得難いものを。 アラゴルンの横顔を見ながら、ボロミアは己の欲するものは己が手にする べきものではないのかもしれない、とも思う。 レゴラスは、異常なほど熱心にこの野伏を庇っていた・・・。 彼は疲れたように鼻柱をこすった。まるで瞳の後ろに闇がさして、己の精神を 曇らせているようだ。もっと話し方に気をつけたほうがいい、そう決心する。 これには多くのことが懸かっている。彼は指輪の置かれたところに目をやって、 それからレゴラスのほうを見た。 全く、多くのものが。 ![]() 旅の仲間はそうして結成された。 ボロミアも、その成功を見越してではなく好奇心からではあったが、彼らに 加わることにした。 指輪の保管があのか弱いホビットに託されたことは全く馬鹿げているとしか 思えなかった。が、彼は何も云わなかった。他の者達が我に返って、指輪の 提示する可能性に気付くのはきっと時間の問題であろうから。 その夜、再び大規模な宴会が開かれた。 エルフの大広間に足を踏み入れながらボロミアは、ここ数年感じたことの なかったある予感に捕われていた。 がらんとした大きなその部屋がこれまでに見たこともないほど一杯のエルフで 埋め尽くされたその様は、まさに壮観であった。もしそこで如才なく振舞えなけ れば、己がだらしなく、場違いにも感じるところだ。 しかし一番前のテーブルに己の探すひとを見つけ、彼の視線はそこに釘付け になった。 エルロンドとその娘と共に、旅の仲間達がすでに席に着いて裂け谷のもてなし を楽しんでいた。ボロミアにとって興味深いことに、アラゴルンはアルウェンと 親密そうな雰囲気であった。 そして、自分でも認めたくないほどの熱心さで、彼は長テーブルを隅から隅 まで探してしまう。レゴラスはホビット達の隣に座っていた。 エルフは、彼を見ていた。 ボロミアの首筋がカッと熱くなる。髭がその忌々しい色を隠していてくれれば 良いのに、と願う。 「もしお嫌でなければ、こちらに席が空いていますよ」 半分笑みを浮かべながら、レゴラスが申し出た。 ボロミアは会釈をした。 「失礼ながら、それは全くの逆というものだ。喜んで行こう、かたじけない」 そう云ってエルフの左側に空いた席に座った。すぐに給仕がワインの並々 入った杯を運んでくる。それを有難く受け取り、半分まで飲み干した。 レゴラスが面白そうに彼を眺めた。 「人の子が、彼らを正体も無く酔わせる飲み物を飲んで自らを奮い立たせる 様には、いつもびっくりさせられますね」 お腹の中でワインの熱が落ち着くのを感じながらボロミアはようやく緊張を 解いた。 「私が一体、何を奮い立たせねばならんというのだ?」 エルフが手を伸ばしてパンを一切れ掴み、半分にちぎった。 「勇気を奮い起こそうとしているでしょう」 言葉は素っ気無かったが、その口調は意味深だった。 ボロミアは誰もこちらを見ていないことに感謝した。己の表情をかすめた パニックは誰の目にも明らかだったろうから。 「我らの使命は確かに困難なものだ」 彼は注意深く答える。 「しかし、旅が始まるまでにはまだ日があるぞ」 レゴラスは人の子に視線を合わせながらパンを一口噛んだ。 「わざと意味を取り違えたふりをしているんでしょう」 「私が?」 じれったさのようなものがエルフの茶色い瞳をよぎった。先の会議でも 感じたように、ボロミアの視線が彼に捕われ、まるで考えていることが全て 伝わってしまいそうだ。 「無知なふりをしている。あなたには似合いませんよ」 人の子はしばらくじっと見つめ、それから弾かれたように笑った。 「狩る者が今度は狩られる立場になったかな?」 興味深いことに、レゴラスの頬にさっと赤味が差した。 「あなたの視線はあからさま過ぎます」 エルフが冷たく答える。突き放すような色がその瞳にはあった。 「そんな大胆さで来られては、落ち着きません」 ボロミアは残りのワインを飲み干し、手を上げて注ぎ足しを催促した。視線を 落とすと皿一杯の食事が目に入ったが、食欲は失せていた。 杯が一杯に注ぎ足され、それをまた飲み干すと、彼はエルフに向き直った。 身体を前に傾け、レゴラスの尖った耳に触れんばかりの距離まで口を 近づける。ボロミアの頬をかすめた柔らかい髪は花のような香りがした。 「私が何を考えているか、知ってるか?」 柔らかい口調で始める。 「あんたは遠くから憧れられることにはもう飽き飽きしているだろう。あんたを 不安にさせているのは大胆さじゃない。他人に踏み込まれるのを恐れる気持ち なんじゃないのか」 レゴラスの食事の手が止まるのを見て、ボロミアの唇が笑みに歪んだ。 「そう、私は大胆だよ、レゴラス。それに私は恐れたりしない。これから先、 あんたは私のせいでかなり落ち着かないことになりそうだな」 レゴラスが身を引いた。エルフの瞳孔が、全ての色を飲み込むかのように 大きく開かれる。 「エルフに挑むとは、よく気をつけることですね」 レゴラスはそう忠告した。椅子を引いて立ち上がると、ボロミアを見下ろした。 「ご自分が人の子にすぎないことをお忘れにならないように。あなた達種族が どのような行動を取るか、わたしはもう飽きるほど目にしてきましたから」 彼は優雅な足取りで、そのまま一瞥もくれずに広間を後にした。 ボロミアはどっかりと後ろに凭れ掛かり、鬱積した息を吐き出した。レゴラスが 去り際に残した言葉は、その背後に隠された真意が読み取れなければ彼を 怒らせていたかもしれなかった。 レゴラスは私に挑戦している。 あのエルフも馬鹿な奴だ。ボロミアは微笑んだ。ゴンドールの息子は決して 挑戦に背を向けたりはしない。 特に、得られるものがこれほど大きい場合には。 ![]() それから何日もの間、彼はエルフの姿を見なかった。 レゴラスが彼から隠れているとは思わなかった。それは自尊心の強い エルフのやり方ではなかったから。 その代わり、ボロミアはレゴラスが、今やこの人の子の抱く興味を良く 心得ている彼が、自分をからかっているのだと感じていた。 その考えは腹立たしくもあり、また興味をそそられるものでもあった。 夜になるとボロミアは裂け谷の中のいくつもの小道や橋をそぞろ歩いた。 日中は、エルロンドの図書室で沢山の本を読んで過ごした。ここでの滞在 の間で、いつしかボロミアはエルフの手による全てのものに魅せられる ようになっていた。繊細に彫りこまれた建築や、優雅に流れるような彼らの 言語−−何もかもがボロミアにとっては異質で、自分の硬質さとは正反対 であり、まるで己の完全体であるかのような憧れさえ抱いてしまう。 ここには、彼が今までの苦難と試練に満ちた人生の中で経験し得なかった 大いなる美が存在する。それはどれだけ見ても飽き足りなかった。 日が経つにつれ、ボロミアは自分がもうすぐこの裂け谷を去らなければ ならないことをひどく恐れていると自覚し始めた。 ここには余りにも多くの学ぶべきことがある。余りにも多くの賞賛すべき ものが・・・。しかし現実的に、心が痛むことではあるが、白昼夢に酔って いる場合ではなかった。 エルフの寝所へと続く橋のうちのひとつを渡っていた時、ボロミアは風に まぎれてアラゴルンの声を聞き取った。 野伏のことを考えると、ボロミアの口中に嫌悪が広がる。アラゴルンと共に 旅に出なければならないと思うと気が重かった。 他の道を引き返そうと踵を返したとき、もうひとつ別の声がかすかに届いてきて、 彼は動きを止めた。 レゴラスだ。 全ての感覚という感覚が、その声を聞き逃すまいと集中する。 ボロミアはそっと前方に忍び寄り、闇に溶け込んで、近くの橋の上にいる 二人の姿を盗み見た。 一緒にいる彼らの親密な様子からは友情以上の強い絆のようなものが 見てとれ、ボロミアは拳を握り締めた。残念なことに彼らの声は聞こえない。 風はボロミアに協力的ではなかった。しかし、彼らの仕草が多くのことを 語っていた。 アラゴルンは動揺していた。それは彼の動きのどこを見ても明白だった。 しきりとレゴラスに触れている様は−−短い接触であったが、それでもなお ボロミアをいらいらとさせた。 奇妙なことに、エルフの反応はほとんど無かった。レゴラスは明らかに諦めた 様子でただじっと聞いている。そのことが自体がまさにアラゴルンを苦しめて いるにせよ、エルフはどうもそれを見越しているらしかった。 しばらくのち、アラゴルンがぴたっと話すのを止めた。 二人は黙ったまま並んで立ち、流れ落ちる滝を眺めた。彼らはここを去る のだろうか、とボロミアは考える。 そのとき、レゴラスがはっきりと同情を示す仕草でアラゴルンの肩に触れた。 人の子を抑制していたものが全て弾け飛び、彼はエルフの細い身体を捕まえ ると、情熱的なキスを仕掛けた。 ボロミアは低く唸り、爪が手のひらに食い込むほどに拳を握り締めた。 アラゴルンがキスを止め、そしてようやく身体を離すのを見ながら、音を立て ないようにじっと我慢する。 人の子は何事かエルフにつぶやき、それから身を翻して暗闇の中にあっと いう間に姿を消した。 ボロミアは彼が立ち去るのを見てはいなかった。その視線は、レゴラスにじっと 据えられていた。反応を見ようとして。 エルフが読み難い表情でアラゴルンの消えた方向を見やりながら、そっと 唇に触れる。 ボロミアにはそれだけで十分だった。こっそりと、彼は来た道を忍び歩いて 自分の部屋に戻った。 ベッドの上に身を投げ出したが、あのキスの映像が頭から離れない。眠りが 訪れるまでに随分と時間がかかった。 眠ってからも、それは夢に現れてボロミアの頭を満たした。彼が見たのは、 影の王国だった。闇のように深い霧が大地にも川岸にも立ち込める王国。 その闇の中心にそびえ立つ塔。中には、大きなベッドをしつらえた部屋が ある。レゴラスが一糸纏わぬ姿で、ベッドに横たわっていた。白く輝く長い 四肢がさざ波のように揺らめく影に包まれている。 夢の中で、この闇の国の王であるボロミアは、ベッドに近寄って、レゴラスの 腕に溺れ込んだ。 エルフは麻薬のように魅力的だった。肌が触れるたびにボロミアの神経が 燃え上がる。彼は荒々しくレゴラスに口付け、その白い肌をくまなく弄った。 レゴラスはボロミアが施す全ての行為に歓喜しているようだった。喉の辺り でくぐもった声をあげ、肉体的な悦びにシーツの上で悶えた。そんな彼の 反応が、人の子をさらに燃え上がらせる。 己の中心を欲望に疼かせながら、ボロミアはエルフに覆い被さった。身体中 の血が征服を求めて猛り狂う。 しかし不可解なことに、レゴラスが突然彼を押し退けた。 不満のうめきをあげながらも、ボロミアは自分達の間に影のカーテンのような ものが現れるのを見てうしろによろめいた。 その向こうで、レゴラスが腕を差し出していた。手のひらには、ひとつの指輪。 闇の中から声が囁きかける。魅惑的な、その囁き・・・ 激しい喘ぎと共に目が覚めた彼は、自分の腕が上掛けの上に大きく広がって いるのに気が付いた。ぶるっと震え、腕を引き寄せる。 レゴラスめ、夢の中でまで私に付き纏う気か。ボロミアは思った。 もう眠りに戻るのは恐ろしかった。暗闇の中で服を着ると、彼は部屋を出て あの橋のほうへと向かった。 |
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