アラゴルンは、自分にはエルフを捕まえる資格はない、と分かっていた。
それでもレゴラスから目を離したくなかった。
レゴラスが歩調を緩める頃には夜になるかもしれない、とアラゴルンは 覚悟を決めていたが、ありがたいことに、レゴラスはこの追いかけっこを 長くは続ける気がなかったようだった。
アラゴルンの目に、エルフが速度を落とし、木漏れ日に輝く頭を深く 垂れるのが映った。

アラゴルンは歩調を緩めず、エルフのすぐ背後に近寄った。
レゴラスが警戒して振り向く。
人の子は身体ごとエルフにぶつかり、そのまま苔に覆われた地面に もつれ合って倒れ込んだ。

レゴラスが彼の下で、身体を捻って仰向けになった。
「何をするんです?」
自分より大きい身体を押しのけようとしながら強い口調で云う。

「二度と俺から逃げようとするな!」
アラゴルンが憤って云った。

反抗心でエルフの頬がカッと紅潮する。
「私に指図するな」彼は切り返した。
「私はあなたのものじゃない、たとえハルディアとあなたがまるで 私を家畜か何かのように獲り合ったのだとしても」

「ハルディアは昨日の夜、お前を自分のものにした」
アラゴルンが目を細め、静かに云った。

エルフは彼の下で身を強張らせ、瞬きもせずに云った。
「私が望んだわけじゃない」
レゴラスの声音からは感情が消えていた。

悲しみがアラゴルンの内を襲った。
「そう、お前は決して自分からは望まない、そうだな?結局、俺の 間違いもそこにあったんだ」
彼はエルフの豊かな髪に両手を埋めた。
「もう長い間、俺は恐くて自分の欲しいものに手が出せないでいた、 レゴラス、お前が離れていくんじゃないかと恐れて。だけど、 それこそがお前の望んでいたことだった。そうだろう?奪われ、 所有されること。誰かのものになることがな」

レゴラスは無言で首を振ったが、アラゴルンはその瞳の中に 欲求を見てとった。
頭を下げ、唇をエルフの眉に沿わせる。
「自分からは求めたくないのだろう。だが、そうはさせん」

「何を云ってるのか分かりません」
アラゴルンの唇に顔の輪郭をなぞられてかすかに震えながら レゴラスが抗議した。
「いつだって、あなたは優しかった。最上級の優しさで私を 愛してくれていたでしょう」

白い肌の上でアラゴルンが笑った。
「欲しくない、などと云ってみろ。お前のことを嘘吐きと呼ぶぞ。
お前は本来情熱的なんだ、レゴラス。俺はずっとその情熱を味わい たかったが、俺自身の恐れに捕われていたのだ」
そう云ってエルフの耳の端をそっと噛む。
「だが、もう抑えはしない。無力でいることにもう疲れた。時は満ちた。 俺が、支配する」

「支配・・・」
レゴラスが弱々しく繰り返し、アラゴルンに耳の先端を舐められて 目を瞑った。
「ええ」

「そうだ」アラゴルンがかすれ声で応じた。
エルフの感じやすい首筋に沿って舌を移動させる。
「お前がこれから感じることの全ては、俺が支配するのだ、レゴラス。 悦びも、痛みも、全て−−」
しっとりと湿った肌の上で息を吐く。
「−−お前が感じるのは、”俺が”望むことだ。”俺が”望むときだ。 そしてお前が達くのは、俺が許すときだけだ」

その言葉にレゴラスはうめき、欲情した身体をアラゴルンの下で もの欲しそうに動かした。その動きでお互いの昂ぶりが触れ合い、 アラゴルンは自制心を保つのに苦労する。
恋人同士になって以来、初めてアラゴルンはエルフに対して 露骨な欲求を突きつけた。今まではいつだって、屈服するのは 自分だった。レゴラスを恐がらせたくなくて、自分の欲求はさらせない ままでいた。
もう待たない。
アラゴルンは最も根源的なやり方で、レゴラスを欲した。

「お前が初めてでないのはもう知っている」
そうつぶやき、恋人の瞳を覗き込む。
そこに罪悪感が閃くのを見てとったが、アラゴルンにとっては二人の エルフ達の間に起こったことはもはやどうでも良かった。
「俺はお前の中に入りたい、レゴラス。お前の中に俺を深く埋め込んで、 他の奴に感じたことなど忘れさせてやる」

レゴラスの瞳が欲望に黒ずんだ。唇が開く。
「ええ、アラゴルン。教えて。’あなた’がどんな風なのかを」

細い身体を倒しながら、アラゴルンは自分の身体を肘で支え、 眼前に横たわったエルフを見た。
やってみたいことはじれったいくらいに沢山ある。
アラゴルンはエルフの上着の下に手を滑り込ませ、手のひらで 腹筋の辺りを撫でさすった。

人の子の大きな手にゆっくりと胸郭の辺りまでを愛撫され、レゴラスは かすかに息を吸い込んだ。
アラゴルンは恋人の顔を眺め、エルフの表情に表れるわずかな 反応を探し、愉しんだ。
これまでは、アラゴルンの愛撫はうやうやしく、ほとんど崇めている と云ってもよいくらいのものだった。
今、彼はレゴラスの身体を独占的にまさぐり、その全てが彼のもの であることを測っているかのようだ。

彼の指が、小石のように固くなった二つの突起を探し当てる。
アラゴルンが欲望に駆られてそれらを強く摘む。果たして、レゴラスの 反応は期待を裏切らなかった。
エルフは驚きと悦びのせめぎあう表情を見せ、身体を仰け反らせた。

「これがイイか?」
アラゴルンがひとりごちて、素早くレゴラスのキスを奪った。
「お前について、知るべきことが山のようにある。まるで、これが お前との初めてのようだ」

レゴラスが彼の髪を掴み、上に引き上げた。
蒼い双眸は開かれ、疑いを知らなかった。
「確かに、これが私たちにとって事実上の初めてでしょう」

アラゴルンはエルフの瞳から読み取れる信じがたい感情の渦に 息を呑んだ。かすれた声で云う。
「では、俺達二人がどんな悦びを分かち合えるかをお前に教える、俺が 最初の男になろう」

彼の手が固くなった突起を離れ、胸から鳩尾を通り過ぎて、やがて エルフのズボン下で止まった。自制心が沸き起こったが、アラゴルンは それに反抗して服を引き下ろした。
レゴラスの身体が跳ねてうろたえたが、性的欲求が縛めから解き放たれて 抵抗はしなかった。

アラゴルンは新たな気持ちで脈動する彼自身を見た。
レゴラスは真に、美しいいきものだ。
その象牙の柱のような造形を、崇めたい気持ちに強く駆られる。
しかし代わりに、人の子は熱をもったそこに手を絡め、ゆっくりと扱いた。 レゴラスはその感触の緩慢さにうめきを上げ、身体の両脇で地面の 苔を握り締めた。

「アラゴルン」エルフが喘ぐ。
「口付けをして」

人の子は笑っただけだった。
「忘れたのか。お前に楽しみ方を決める権利は無い。俺が決めるんだ」

レゴラスは悪意を込めてアラゴルンを睨んだが、彼の手の動きに すぐに甘い苦痛を感じて目を固く瞑った。
人の子はその様子を熱心に見ていたが、レゴラスが頂点を 迎えそうになっているのに気づくと、彼自身の欲望も痛いくらいに 膨れ上がった。
エルフの昂ぶりの先端から真珠のような滴りが零れ落ちるのを 見て、もう十分だろうと判断する。
最後にもう一度強く扱くと、不意に彼を放した。

「嫌!」
レゴラスは切羽詰った叫びをあげ、満足させられなかった欲望に 身体を折り曲げた。張り詰めたそこに手を伸ばそうとしたが、 アラゴルンがそれを払いのける。

「”俺が”許すまで楽しみは無い、と云ったろう」
アラゴルンがやんわりと云った。

怒り、失望、欲情−−気の狂いそうな感情の混乱で、レゴラスの 表情はまるで拷問を受けているかのように見えた。
エルフを支配していることに満足して、アラゴルンはエルフの昂ぶりの 濡れて輝く先端に指を走らせる。
ぬめぬめと光るものをたっぷりと指に塗りつけると、レゴラスの腿を 押し開いて秘密の入口を探した。

固く閉じられた肉欲の蕾に指を押し当てて、アラゴルンは己自身が さらに固く怒張するのを感じる。
エルフ自身のぬめりを潤滑油として、太い指をすぼまった熱の在処に 滑り込ませた。レゴラスがまだ馴染みの薄いこの侵入行為に身体を 強張らせる。その抵抗は、アラゴルンにとっては不快なほど刺激的だった。

注意深く二本目の指を差し込み、緊張したままのすぼまりを広げる。
強張ったままの肉をなぞり、レゴラスを完全に己の支配下に置ける スポットを探る。
ようやくそこを見つけ、アラゴルンは勝ち誇った笑みを湛えた。
レゴラスの身体ががくんと跳ね上がり、彼の名を喘いだ。

「知っていたか?」
アラゴルンが喉を鳴らし、エルフの快感の一点で指を前後に 抜き差しする。
「他のどこを触れなくても、こうするだけでお前を達かせることができる のだぞ。やってみたい気もするが」

「アラゴルン、嫌」
エルフが弱々しく抗議した。
「お願い、こんな風に私をじらさないで」

人の子はその言葉無視して口付けた。
「シーッ」苦痛に噛締められた唇に囁きかける。
「楽しみ方はいくらでもある。お前を俺自身の身体で奪うのが楽しみでも あるということを忘れるな。今はただ、感じろ、レゴラス。これを 楽しんでみろ」

レゴラスが指の動きひとつひとつに身悶え、悦びに震え、唇から 鋭い叫びをほとばしらせるさまを観察して、アラゴルンは所有欲に 塗れた笑みを浮かべた。
アラゴルンの飢えた目に、レゴラスが官能的な獣のように映る。
エルフの長く色の薄い髪が、汗に塗れた額に淫らに貼りついている。
漆黒の闇のごとく見開かれた瞳孔とは対照的に、頬骨の辺りが 薔薇色に染まった。
無意識に、レゴラスの舌が悦びにあわせるように唇を舐める。
アラゴルンは彼の全てをむさぼり尽くしたかった。

レゴラスのそこが少し緩んだのを見て、アラゴルンは計画を変えた。
アラゴルンが己の下着を下ろして恋人の身体に覆い被さると、エルフが 歓喜の声をあげた。
「もう待てない」
アラゴルンが喘ぎ、固く締まった蕾から指を引き抜いて代わりに 己の怒張の先をあてがった。
「お前の中に入らないと、死んでしまう」

「ええ!」
レゴラスが鼻を鳴らして狂ったように人の子の尻を掴んだ。

強く前に押し進めると、憶えの無い刺激がアラゴルンを襲った。
性急な突きにレゴラスの唇から苦痛の叫びが漏れ、一瞬後悔する。
狭いそこで己の中心がびくびくと痙攣し、アラゴルンは動きを止めた。
頭を乗り出して、舌をレゴラスの唇の裂け目に滑り込ませ、無理やり こじ開ける。震える吐息を吐きながら、レゴラスが彼を受け入れた。

アラゴルンが舌を奥まで差し込み、下のほうでもこんなことがしたい のだと示すように動かした。
その動きはエロティックで、程なく、レゴラスがそれに応えはじめた。
信じられないほどきつかったそこが緩み、アラゴルンがうしろに 引き抜けるくらいになる。
舌をエルフの口内に残したまま、彼はもう一度腰を前に突き出した。
共に感じる悦びのうめきが、唇と唇の間で溶け合った。

アラゴルンがレゴラスの中で注意深くうごめき、悦びを気も狂わん ばかりの解放へと導く。
エルフの顔中にキスを降らせ、首筋や肩の肌をむさぼる。
レゴラスの青白い喉に目をやると、アラゴルンの笑みは意地悪な ものに変わった。
唇をその白い肌に押し付け、レゴラスが痛みに身悶えるまで吸う。

「何をしているんです?」
膨れ上がる欲情にうめき、エルフが荒い息を吐いた。

白い肌に残る跡を認めて満足しながら、アラゴルンが答える。
「お前に印をつけたのだ、レゴラス。お前が俺のものだと、誰も 疑いようのないようにな」

「ああ、何てこと」
レゴラスが息をついて、瞼を伏せる。
「そんなことを云っていると・・・」

「他でもない真実だ」
アラゴルンがそっけなく答えた。

それを証明するために、彼は腰を折り曲げた。
レゴラスには否定できなかった。エルフは彼のものだった。

アラゴルンは焼け付くような熱に迎え入れられ、官能に我を忘れた。
レゴラスの身体が人の子にきつく絡みつき、アラゴルンの肩にしがみつく。
絶頂を迎える一歩手前で人の子はエルフの状態を確認する。
肩を落として、恋人の上に完全に身体を押し付け、アラゴルンは さらに深くレゴラスに突き入れた。
焦点の合わない暗い瞳で、エルフが見も世もなく縋り付いた。

「さあ、達っていいぞ」 アラゴルンが囁き、レゴラスがうめいた。
中心のまわりで肉が痙攣し、人の子は狂おしく恋人に口付ける。 レゴラスが叫びを上げ、仰け反った頭を苔の上に投げ出す。 二人の間に、白濁がほとばしり出た。
その光景を目の当たりにしてアラゴルンの我慢も限界に達した。
ぐっと前に突き出すと、身体に痙攣が走り、レゴラスの中に生命の エキスを注ぎ込んだ。
息を弾ませ、エルフの胸に倒れ込む。

満足げに横たわり、エルフの激しい鼓動がやがてゆっくりに速度を 落とすのを聞くアラゴルンの髪を、レゴラスが優しく撫でた。
「ありがとう」
優しく、エルフが云った。

その妙な言葉に驚いて、アラゴルンが身を起こして肘で支える。
夕焼けに映える若々しく美しい顔をじっと眺め、やがて己の欲望との 戦いの感情が、愛情に変わってゆくのを感じた。
「お前はこれまで一度も、俺に屈服したことはなかったな。その心も、 そしてその身体も」
アラゴルンがゆっくりと口を開いた。

レゴラスが真っ直ぐに瞳を向けた。アラゴルンの息が止まる。
とうとう、恋情が−−穏やかな友愛ではなく−−エルフの瞳の深遠で 赤々と煌いていた。
「私が今まであなたに屈服しなかったのは、多分、あなたがそれを 私に命じなかったからです」
穏やかに、エルフが答えた。

所有と愛とが自分の内で同化するのを感じながら、アラゴルンはエルフを 抱き締めた。
「それならば、俺は今日より残された人生すべての日において、お前に そう命じよう」
彼は高らかに宣言した。

レゴラスの答えは甘く、優しかった。
「至上の喜びです」




The End
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