CHALLENGE ACCEPTED(受けられた挑戦)



アラゴルンは恋をしていたが、馬鹿ではなかった。

彼はレゴラスの部屋の窓辺に立ち、遠くに見える滝と夜の帳を 眺めながら思いに沈んでいた。
レゴラスはなぜ、アラゴルンが眠りに着いたと見るやこの夜の 闇の中に逃げ込んでいったのだろうか?
一体、どこへ?何をしに?そして、最も恐れるべきは−−誰と?
その答えを知るのは恐かった。

レゴラスとの間の、何かが変化していた。それはごく取るに足らない もので、あのエルフでさえ気づいてはいなかっただろうけれど。
しかし、何かがあった。彼らの間に、まるで越えるべき橋のような 隔たりが。
こちら側に留まることは、怠惰の中に安住するということだ。
しかし、それを越える心の準備が自分にできているかどうかは、 アラゴルンには甚だ疑問だった。

臆病者め。内なる声が彼をなじった。人間達の先頭にたって戦場に 率いて行ったこともあるお前が、こんなことで躊躇するのか?
ああ、しかしアラゴルンは分かっていた。
戦場で死と向き合うことのほうが、心を引き裂く痛みに耐えるより どんなにか楽だろうか。

レゴラスが戻るまで、館内のその辺を歩こう、と彼は部屋を後にした。
しかし、一向にエルフの戻る兆しが無いとわかると、彼は我知らず 外に出て、滝のほうへと向かっていた。
彼の恋人がいるであろう場所へ。

レゴラスは決して愛を返そうとはしない。アラゴルンにはそれが 分かっていた。レゴラスが彼に対して、友愛以上の強い感情を抱いて くれているのでは、という思い違いをするのはとうにやめた。
その状態を何とか変えられないものかとアラゴルンはずっと考えてきた。
しかし、いつもそれは一つの真実に突き当たる。
レゴラスはエルフで、彼は人間だ、ということに。
この世のどんな生き物より美しい存在のレゴラスなら、どんなものだって 望むことが出来る。
彼がアラゴルンにその身体を与えたことは、奇跡でしかなかった。

不幸にして、奇跡というものはうつろいやすいものだ。
アラゴルンは常に、いつかレゴラスが己の元を去るのではという 恐怖に駆られていた。
それは避けようの無い真実であると分かってはいたが、アラゴルンは その日が来るのが少しでも先になるようにと願っていた。
だから、何も期待しすぎず。束縛しすぎず。望むべきでないものは望まず。
それは結局、レゴラスが自らアラゴルンに与えてくれるものだけが、 彼に許されるものだ、ということ。

道はいつの間にか橋にたどり着いていた。滝がすぐ近くにあるせいで、 欄干から水滴がしたたり落ちている。
恋人の声がすぐ近くで聞こえ、一瞬全身に緊張が走った。
エルフに囲まれて育ったおかげで、彼は相手に気づかれずに 近づく術は心得ていた。声のするほうへ、これ以上は不可能なほど 近づく。暗がりに身を隠し、そして、見た。

心のどこかで、相手がハルディアであることはもう分かっていた。
ロリアンのエルフは獲物を狙う鷲のようにレゴラスを値踏みしていた ではないか。
一度ならず、このエルフが欲望も露わにレゴラスを見つめていたのに 人の子は気づいていた。その度にハルディアはアラゴルンに頷きかけ、 傲慢な表情を見せた。
あたかも、自分はアラゴルンのまだ知らないことも知っている、とでも 云いたげに。
あたかも、アラゴルンがずっとともにしていた寝床から、自分が レゴラスを誘惑して奪い去ってしまうのは時間の問題だ、とでも 云いたげに。

人の子は言葉も無く立ち尽くした。エルフ達が交わす言葉は聞こえようも なかったが、聞きたくもなかった。
滝の水滴が眉の上に溜まり、びしょ濡れになった服で身体が冷える。 そのどれもが、意識には無かった。
時間が経つにつれ、世界が歪みはじめる。
最初に受けた大きな衝撃が、次第に同じだけ強い怒りに取って代わる。 一体、レゴラスは何を思ってこれまでの自分達のすべてを捨てて しまえるというのか?
凶暴な感情が衝動的に渦巻いた。

しかし、他の男と共に居る恋人を見続けるうちに、次第に怒りは萎え、 諦めに変わった。認めたくは無かったが、レゴラスが単に彼自身の 情熱の犠牲者であるということがアラゴルンにはわかったのだ。
この誘惑が完全に一方的なものである、と考えることに人の子は ささやかな慰めを見出した。
もしハルディアが積極的でさえなかったら、今アラゴルンの眼前で 繰り広げられている場面は起こりえなかったはずだから。

しかし、それは起こってしまった。

レゴラスがついにもう一人のエルフの上に崩れ落ち、ハルディアが 両腕の縛めを解くに任せてぐったりと横たわったとき、アラゴルンは心中に 渦巻く感情に混乱して後じさった。
きびすを返し、眩暈を覚えながら館に戻った。

世界のすべてが変わってしまったのだろうか?それとも彼の世界だけが?
レゴラスの心の秘密を自分だけが知っていると思っていたが、今夜 それは間違いだということが証明された。
ハルディアは人の子が気づいてさえいないうちに彼に挑んでいた。
そして、さらに重要なことには、そのエルフが勝利したのだ。

彼はレゴラスの部屋の暗闇に忍び込み、シーツに潜り込んだ。
天井を見つめながら、待った。
レゴラスはきっと、部屋に戻る前に川で水浴びするはずだ。
ハルディアの匂いを身体に残したままでアラゴルンに何か気づかれる つもりはないだろうから。

様々な思いが頭をよぎるうちに、さほどの時間も置かず、ドアが静かに 開いてほっそりとした姿が部屋にすべり込んできた。
アラゴルンは目を固く瞑り、身体の緊張を解そうと努力する。
彼は正しかった−−そっとベッドに入ってシーツを被ったレゴラスからは 彼のもの以外なんの匂いも感じられなかった。

彼の呼吸を感じ、隣に慣れ親しんだ温かさを感じるうちに、アラゴルンの 固く閉じられた瞼の下に熱いものがこみ上げてきた。
何故?彼は世界に向かって、あらゆる人に向かってそう叫びたかった。
あんなにも沢山のものを与えた自分を、何故裏切るのか?
おずおずとした手が肩に触れてきて、彼は意識を戻して目を開け、 瞬きした。

「アラゴルン、眠っているの?」

レゴラスの声音はどこか妙で、苦しそうだった。
アラゴルンは枕の上で頭を巡らし、エルフを不思議そうに眺めた。
エルフの大きな瞳は、涙で溢れそうだった。
見る間に、光る涙がぽろぽろと頬を流れ落ちる。
アラゴルンは唖然として濡れた頬に指をのばした。

「お前が涙を流すのははじめて見る」
そうつぶやき、涙の筋を指先でなぞる。

「アラゴルン」レゴラスがとぎれがちに囁く。
「アラゴルン、あなたに話さなければならない」

瞬間、アラゴルンは恋人のその告白を絶対に聞きたくないと思った。
レゴラスの口を手のひらで覆う。
「何も云うな!」
彼はとげとげしい口調で囁き返した。
エルフの瞳が、彼の手の上で瞬く。
「何も云うな、レゴラス。ただ−−ただ、俺にお前を愛させてくれ」

アラゴルンが手をどけて替わりに口を覆い被せると、レゴラスの 目の端からさらに涙が流れ落ちた。
キスの味は塩辛く、同時に甘かった。
アラゴルンは自分の頬もまた濡れるのを感じる。彼もまた、泣いていた。
頬をすり合わせ、痛みを分かち合う。
エルフが触れてこようとする手を掴む。

「アラゴルン、どうか」
レゴラスが抗議した。
「あなたに話さなければ。私は許されるべきでないことをしてしまった」

アラゴルンはほとんどやけになって首を横に振った。
お前にはわかってない、と彼はエルフに云いたかった。
お前が認めただけでもう十分だ。言葉で聞く必要なんかどこにある。

「私は、私は−−ああ、やめて・・・」

アラゴルンの手がシーツの下の身体に触れ、レゴラスの言葉は うめきに変わった。
「嫌、アラゴルン−−」
欲情が彼に残った最後の理性を奪い去り、大きく息を吐く。
アラゴルンは彼の上に屈み込んで、情熱に解かれたエルフが 頭を枕の上で激しくのたうたせるのを眺めた。
人の子の腕の中で、悦びを見出したレゴラスが今だかつてこれほど 美しく見えたことはなかった。
ふいに、目も眩むような嫉妬心がアラゴルンの中で燃え上がる。
ハルディアは一度はレゴラスを手に入れたかもしれないが、もう 二度とそうはさせるものか。

レゴラスが手の中でびくびくっと痙攣し、蒼い双眸をアラゴルンの それに合わせた瞬間、解放が訪れた。
初めて、アラゴルンはそのエルフの蒼い瞳の中に、友愛以上の ものを見た、と思った。
そう、哀しみと、悔恨を。
けれど、まだ何かがある・・・レゴラスが瞬きし、それが何であれ、 消えてしまった。
悲しいかな、この暗闇の中ではそれはどのようにも受け取れた。 アラゴルンはほっそりとしたエルフの身体を腕の中に引き寄せ、その 柔らかく色素の薄い髪に顎を寄せた。
レゴラスが顔をアラゴルンの胸にうずめる。
お前は俺のものだ、アラゴルンは猛烈にそう思った。
俺が生きているうちには、二度と他の奴に触れさせるものか。





アラゴルンがレゴラスよりも先に目を覚まし、恋人を起こすことなく 着衣を済ませることができたのは、前夜レゴラスが疲れきっていた ことを意味した。
アラゴルンはベッドの横に立ち、エルフを眺めた。
”彼の”エルフを。
レゴラスは額をだるそうに腕で覆いながら、横たわっている。
上に向けられた手首の内側に、消えかかった赤い線が痛々しく 残っていた。

その跡が残った元凶を思い出し、アラゴルンは唇を引き結ぶ。
拳を握り締め、彼は音を立てずに部屋を出た。

彼は他の者達が朝食を取っている広間を避けた。誰にも会いたく なかった。
厨房を通り抜ける際にリンゴと一切れのパンを掴むと、川を見晴らせる お気に入りのベンチへと向かう。

美しい朝だった。天気も良い。滝にはかすかに揺らめく虹が掛かっている。
しかし残念なことに、アラゴルンには全てが気に入らなかった。
陰鬱で、自暴自棄な思いに駆られる。
俺はレゴラスを失いかけている。それを止める術を俺は知らない。

エルフのような儚い存在を捕まえ、手元に置くには一体どうしたらいい?
アラゴルンがしたように、全ての自由を許して信じるしかないのか?
それとも、全てを否定して逃げないように強く捕まえておくしかないのか?
どちらの選択肢も正しいとは思えなかった。

思いがけない音が聞こえて、沈思が破られる。
好奇心に駆られ、彼は膝のパン屑を払いながら立ち上がり、剣の ぶつかり合う音のするほうへと向かった。

ハルディアと弟達が剣戟の真似事をしているのに行き当たる。
どす黒い感情が、アラゴルンの内で渦巻いた。
突然何かを正したくなって、前に進み出る。
弟たちは彼の姿を認めて歓迎の声をあげたが、彼の顔に 張り付いた意地悪な笑みを読み取ると、次第にその声は 小さくなり、やがて口をつぐんだ。
最後にハルディアが振り返り、剣先で足元の泥に線を描きながら 近づく人の子のほうを見た。


感心なことに、エルフの表情には何も表れていなかった。
「アラゴルン、おはよう。ごきげんはいかがかな?」

このハンサムなエルフを絞め殺してやりたい、という強烈な思いに 流されそうになりながら、アラゴルンは彼らの持つ剣に近づいた。
「お前に挑戦を申し入れに来た、ロリアンのハルディア」

ハルディアの表情に理解の色が浮かび、男は笑みの端をさらに 吊り上げた。
「それはそれは。俺ではあなたにとうてい敵わないと思うのです がね、アラゴルン。闘ったところで、すぐに決着がついてしまって 面白くありませんよ」

それが死を賭けるような闘いになったとしてもな。アラゴルンは 己のうちでひとりごちた。
ハルディアのうぬぼれた様子に平静を装いながら、肩をすくめて見せる。
「お前はすでに身体慣らしをしているが、俺はまだだ。それが少しは お前に有利になろう。もっとも、お前にそんなものは必要ないだろうが」

「口がお上手だ。俺の技量なぞ、あなたのそれに比べれば確実に 劣っていますよ」
エルフが皮肉を湛えて笑った。
「そのように、教えてもらったんですがね」

瞬時に、アラゴルンの視界が真っ赤に染まった。
レゴラスとハルディアの絡み合う姿の残像が一気に脳裏に蘇る。
手のひらに爪が食い込み、血が滲んだ。 「剣を貸せ」
激しい怒りが言葉の調子から滲み出るのも構わず、彼は弟達に 命令した。

ハルディアが頷くのを確認して、ルーミルが躊躇いがちに剣の柄を アラゴルンに差し出す。
人の子はそれを持ち上げ、幾度か素振りをして重さを測った。
満足して、ハルディアに対峙する。

「賭けの褒賞は何です?」
エルフが無邪気さを装って尋ねた。

アラゴルンの笑みは薄い剃刀のようだった。
「もう分かってると思ったがな」

ハルディアが勝ち誇ったような笑みを返す。
「では、交渉は成立だ。素晴らしい。さっそく始めよう」

初めの一撃はお互い、相手を試すようなものになった。
ハルディアが軽い足取りで前に後ろに飛び廻り、剣で突付きまわす。
アラゴルンはじっとそれに耐えた。
突進したい思いをこらえ、この傲慢な生物が彼に近づくのを待つ。

「動きの鈍い奴だな」
ハルディアがそうあざけりながら、素早い突きを入れながら後ろに 飛び退る。
「先祖の情熱はどこへやった、アラソルンの子アラゴルン?」

「そう簡単には自分を浪費しないことにしてるんでね」 アラゴルンがあっさりと答えた。
「お前も見習ったほうが良いぞ」

ハルディアが弾けるように笑った。「よく云った」
アラゴルンの防御をかいくぐって人の子の腹部を刺し貫こうとする。
それを難なく刃で受けとめ、突き返す。ハルディアがそれを撥ね退ける。

「こんなやりかたで俺に挑戦するとは、人の子も口ほどにもないな。
奴はこんな守り一辺倒のお前にちゃんと満足してたのか?」

アラゴルンは彼を無視した。
彼の剣は大きく孤を描き、すんでのところで見をかわしたエルフの 上着の紐を切り落としそこねた。

「ひとつ慰めになるようなことを教えてやろうか」
少し息を切らしながら、ハルディアが続けた。
「奴は本当ならもっと楽しめていたはずだが、そうはいかなかった ようだったよ。残念だが、お前のことを考えて気が散っていたようだ」

「あいつのことで、それ以上云ってみろ」
鋭い鋼のような声でアラゴルンが警告した。
「最後の血の一滴まで絞り取ってやる、ハルディア」

エルフの端正な顔が、不安の影で曇った。
「遊んでいるつもりではないのだな」
彼は明言した。

アラゴルンが歯をむき出した。
「違うとも」

ハルディアから愉快そうな表情が消えた。
「では、闘おう。俺だって負ける気はない」

金属のぶつかり合う音が不協和音をかなでた。アラゴルンの緊張は 極度に達し、その剣先は正確を極める。
彼にとっては、ハルディアなど兎を仕留める程度のものにすぎなかった。
注意深く動き、エルフの剣先を器用にかわし、ハルディアに隙ができたと 見るや、突き返す。

エルフは熟練した戦士だった。ハルディアは自分達の闘い方の 違いをよく理解し、自分の持つスピードを武器に使おうとしていた。
複雑な動きで剣を廻したり薙いだりしながら人の子の防御の隙を 突こうとする。

力は互角だった。おそらくは互角でありすぎた。
どちらの戦士もありったけの力を出して汗に塗れて闘っていたが、 そのどちらもまだ一撃を加えるほど近くに寄ることができずにいた。
ハルディアが前に飛び出し、剣を斜めに突き出す。
アラゴルンが腕を上げ、白刃の衝撃を肩で受け止める。

「一体、何をしているんです?」

レゴラスの冷たい詰問が飛んできて、アラゴルンは一瞬気をそらせた。
敵の剣先をかわし損なって頬を切られそうになり、後ろに倒れる。

「若君!」
ハルディアが嬉しそうに叫んだ。
「ちょうど良い時に来たな。寛大なるこの御仁に、名誉を賭けた闘いを 挑まれていたところだ。もっとも、奴が守ろうとしているのはお前の名誉 のようだが」

アラゴルンはレゴラスの顔が見たいと思ったが、彼が背を向けている のとハルディアに阻まれているのとでそれは叶わなかった。

「そして俺が何のために闘っているか知ってるか?」
返答がないことを気にもせず、ハルディアが続ける。
「お前ともう一度、楽しい時間を過ごせる機会を得るためさ」

レゴラスがはっと息を呑んだが、アラゴルンには聞こえなかった。
ハルディアはやりすぎたのだ。
アラゴルンは我慢の限界に達した。
彼は裂け谷でエルフ達に鍛えられている。
ハルディアは忘れているようだが、彼はエルフの戦い方を熟知していた。
エルフがアラゴルンの良く知った動きを見せ、それが人の子に有利を もたらした。
剣の切っ先を受け流し、アラゴルンはくるりと向きを変えてエルフの 無防備な側に突進した。ハルディアが剣を上げたが、遅すぎた。
アラゴルンの白刃がついに彼の喉を捉えた。

灰色の瞳が光って、恐怖の色がその縁に現れた。
「不意打ちを食ったな」
ハルディアが認めた。「さあ、血の一滴まで取るがいい」

「まだだ」
アラゴルンがやじった。
前に乗り出し、剣先をさらに薄い肌に押し付ける。
「レゴラスと俺にした過ちを認めろ、ハルディア、そうすれば 許してやる」

「アラゴルン、やめて!」

レゴラスの手を払いのけ、剣越しにハルディアをねめつける。
剣先がエルフの首筋に食い込み、血が一滴流れ出た。
「さあ、云え」アラゴルンが歯をきしらせた。

ハルディアがごくりと唾を飲み、その動きで喉がさらに剣先に押し 当てられることになってたじろいだ。
「お前の勝ちだ。負けを認める」
そのような状況にもかかわらず、唇に自虐的な笑みが浮かぶ。
「そいつはお前のものだ」

「あなたたちは二人とも馬鹿です!」

レゴラスの乱暴な口調に、アラゴルンは肩越しに彼を見た。
エルフは怒りで頬を紅潮させ、茶色の瞳がぎらついている。
「私は戦利品じゃない!」
彼はぴしゃりと言い捨てた。
「あなたがたの、どちらのものでもない」

アラゴルンは剣を下ろし、手を伸ばした。
「レゴラス、待て−−」

しかしエルフは聞く耳をもたなかった。
鹿のように身を翻し、森の中に消える。
アラゴルンは躊躇ったが、すぐにハルディアを押しのけてレゴラスの 後を追った。

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